保険診療と歯科の行政指導、行政処分
関東信越厚生局などの歯科・歯科医師への個別指導、監査に関するウェブページです。
医道審議会(免許取消・歯科医業停止)などの歯科医の行政処分についても記載します。
行政指導や行政処分への対応は、その仕組みを知ることがまずもって重要です。
保険医療機関(歯科)への行政指導(個別指導)
個別指導での厚生局の指摘事項
医科の診療所や歯科医院などの保険医療機関への個別指導(行政指導)は、厚生局及び都道府県が、厚生労働省の指導要綱などに従い実施しますが、大きな方針は厚生労働省保険局医療課医療指導監査室が決めていると考えてよいでしょう。全国の厚生局などは、国が決めた方向性に従って、保険医療機関に個別指導を実施していくということです。共同指導との形式で、厚生労働省が保険医療機関に対して実際に指導を実施するケースもあります。
厚生局の新規個別指導についても、基本的な事項は個別指導と同様です。ただ、対象患者の人数や対象患者の通知方法など、新規個別指導の方が個別指導より軽い手続きとなっています。
新規個別指導の具体的な流れや概要については、新規個別指導のコラムをご参考下さい。
厚生局の具体的な指摘事項は、各厚生局が年度ごとに公表しています。ここでは、一例として、以下、令和2年度の歯科の近畿厚生局の指摘事項を挙げておきます。
近畿厚生局の歯科の個別指導での歯科診療に係る当該指摘事項では、以下に関する指摘事項の具体例が挙げられており、指導に臨むにあたっては、管轄の厚生局の直近の指摘事項について、一読しておくとよいでしょう。指摘事項は、一般的に保険医が誤解しやすく間違いやすい点であり、地域的な傾向もあると感じますので、個別指導となった場合は、その地域の厚生局が公表する最新の指摘事項のリストを確認することがポイントです。
Ⅰ 保険診療等に関する事項
診療録等
基本診療料等
医学管理等
在宅医療
検査
画像診断
投薬
歯周治療
リハビリテーション
処置
手術
麻酔
歯冠修復及び欠損補綴
保険外診療
その他
Ⅱ 診療報酬の請求等に関する事項
届出事項
掲示事項
施設基準等
診療報酬請求
一部負担金等
なお、同様に、医科の個別指導についても近畿厚生局が指摘事項を公表しており、歯科の個別指導においても参考になります。基本的な枠組みは同じであるためです。
近畿厚生局の当該指摘事項は、以下に関してのものです。個別指導に臨むにあたり、医科歯科共通の気になる事項については、医科のものもざっと目を通してもよいでしょう。
Ⅰ 診療に係る事項
診療録等
傷病名
基本診療料等
医学管理等
在宅医療
検査
画像診断
投薬・注射
リハビリテーション
精神科専門療法
処置
手術
麻酔
病理診断
特定保険医療材料等
Ⅱ 請求事務等に係る事項
診療報酬明細書の記載等
一部負担金等
保険外負担等
掲示・届出事項等
Ⅲ 包括評価(DPC)に係る事項
診断群分類及び傷病名
Ⅳ その他特記事項
保険薬局の個別指導についての近畿厚生局の指摘事項も公表されています。
同様の理由から、事務的事項などで重複する部分について、歯科指導においても参考にしてよいでしょう。
Ⅰ 調剤全般に関する事項
処方せんの取扱い
処方内容の変更
処方内容に関する薬学的確認
調剤
調剤済処方せんの取扱い
調剤録の取扱い
その他
Ⅱ 調剤技術料に関する事項
調剤料
調剤料または調剤技術料に関する加算
Ⅲ 薬学管理料に関する事項
薬剤服用歴管理指導料
薬剤服用歴の記録
薬剤情報提供文書
経時的薬剤記録記入の薬剤の記録用の手帳
薬剤服用歴の記録(電磁的記録の場合)の保存等
麻薬管理指導加算
重複投薬・相互作用等防止加算
特定薬剤管理指導加算
乳幼児服薬指導加算
かかりつけ薬剤師指導料
在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料
服薬情報等提供料
その他
Ⅳ 事務的事項
登録・届出事項
掲示事項
薬剤師数
一部負担金等の取扱い
その他
保険請求に当たっての請求内容の確認
関係法令の理解
指導対象薬局の開設者がほかの保険薬局も開設している場合
個別指導の流れについて
良い結果で終るためには、個別指導(行政指導)の仕組みを理解することが重要です。仕組みがわからなければ、手続きの意図が正しく理解できないためです。
歯科の個別指導の仕組みついては、以下の書籍が参考になります。
『改訂版:歯科の個別指導・監査・医道審議会の行政処分への対応法』
歯科個別指導についてまずはきちんと仕組みを知ろうとする場合、一読してもよいでしょう。個別指導と連動する医道審議会の行政処分についても記載があります。
指導の実施状況としては、医歯薬のすべてを含めると、平成29年度においては、個別指導4,617件 (対前年度比94件増)、新規個別指導6,145件(対前年度比28件減)、適時調査3,643件(対前年度比280件増)となっています。
厚生局による個別指導の対象保険医療機関の選定については、対象保険医療機関の個別指導での厚生局の選定基準、選定方法のコラムに記載があります。
保険医療機関等の指定取消処分(指定取消相当を含む。)の原因(不正内容)は、不正請求(架空請求、付増請求、振替請求、二重請求)がそのほとんどを占めています。
指定取消処分 (指定取消相当を含む。)に係る端緒としては、保険者、医療機関従事者等、医療費通知に基づく被保険者等からの通報が取消(指定取消相当を含む。)件数の多数を占めています。トラブルなどにより情報提供され、その結果、個別指導となった場合、高点数による個別指導に比べて、より慎重に対応することが求められます。
取消処分となってしまった場合は、医道審議会の行政処分により、歯科医業停止となることがあります。こちらについても、ざっくりとでも流れを理解しておくことをお勧めします。
なお、個別指導には都道府県によって地域性があり、これについては、関東信越厚生局個別指導のページをご覧ください。
また、保険診療の具体的な算定方法についての厚生労働省の公式見解である保険請求に関する疑義解釈については、一例として、医科個別指導のページに記載がありますので、ご参考いただければ幸いです。
以上、医科、歯科、薬局の個別指導について言及しましたが、厚生局の指導監査の仕組みは、柔道整復師や施術師(はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師)に係るものもあります。
それぞれ、仕組みが完全に同じではないのですが、類似する部分も多く、双方の仕組みを知ることで、厚生局の指導監査、行政指導、行政処分への理解を深めることができる側面があると感じます。
施術師(あはき師)に係る個別指導については、あはきの個別指導(はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師)のコラムが参考になります。
改元と個別指導
平成から令和となり、改元がなされました。
ちなみまして、 厚生労働省保険局医療課長による地方厚生局医療課長などに宛てた改元に関する医療事務の取扱いの通知(保医発0422第2号平成31年4月22日)をご紹介します。なお、以下は、適宜省略等を行い、コメントをしています。
改元に伴う保険医療事務の取扱いについて
天皇の退位等に関する皇室典範特例法(平成29年法律第63号)に基づく皇位の継承に伴う本年5月 1日の改元に先立ち、新元号については、今月1日に閣議決定されたところであるが、改元に伴う保険医療事務の取扱いについては、下記のとおりとするので、その取扱いに遺漏のないよう貴管下の保険医療機関及び保険薬局並びに審査支払機関等に周知徹底を図られたい。
【コメント】
改元に関して、様式など、様々な変更が生じます。改元の過渡期においては、下記を漏れなく把握し、医療機関などにおいても、適切に対応して下さい。
改元での様式でどうしても判断がつかない事項などは、聞きづらいところですが、端的に、厚生局の担当部署に照会し、指示に応じて対応することが無難です。
記
1
別表(※本ウェブ記載省略)に掲げる様式については、厚生労働省令及び厚生労働省告示の改正が行われる予定(5月上旬に公布予定)であるが、様式の改正に係る経過措置として、次の取扱いがなされるものであること。
(1)当該改正前の様式(以下「旧様式」という。)により使用されている書類は、当該改正後の様式によるものとみなす。
(2)旧様式による用紙については、合理的に必要と認められる範囲内で、当分の間、例えば、訂正印や手書きによる訂正等により、これを取り繕って使用することができることとする。
(3)国の作成する文書であって、改元日(5月1日)前に作成し公にするものについては、改元 日以降の日時は引き続き「平成」により表記することとされており、国以外の作成する文書であっても当該取扱いが望ましいものであるが、国民生活への影響をできる限り少なくする観点から、申請等を受け付けるに当たっては、当分の間、
① 改元日前に、「令和」により改元日以降の日時が表記されている場合
② 改元日以降に、「平成」により改元日以降の日時が表記されている場合
のいずれについても、必要な読替えを行った上で、これを受理する。
(保険医療機関等から患者等に交付する文書についても、同様に有効なものとして取り扱うこととする。)
2
当職通知等により定める様式についても、上記1と同様であること。