整骨院の個別指導

柔道整復師(柔整師)についても、医師、歯科医師、薬剤師への個別指導と類似の仕組みがあり、整骨院への個別指導や監査が実施されています。なお、近年では、柔整師の場合、審査会の役割が増しているところですが、ここでは立ち入りません。

歯科医師の診療所にあたるものが柔道整復師の施術所となりますが、施術所の場合は、交通事故での損害保険会社への保険金の不正請求がしばしばニュースになっており、詐欺として立件され刑事事件にもなっていますが、交通事故の整骨院・接骨院の不正請求(刑事事件・詐欺)だけではなく、健康保険の療養費の請求についても、受領委任の取扱いという仕組みを介して、不正がなされた場合は、厚生局による個別指導、監査が実施され、受領委任の取扱いの中止という仕組みが運用されています。

柔道整復師は、近年、大幅にその資格保有者が増加しており、供給が増えれば、当然、競争が激化し、経営が苦しくなりますので、その結果、不正を行ってしまう方も存在し、保険会社や厚生局は、不正が行われていないか、目を光らせています。情報提供などで不正を発見すれば、損害保険会社であれば事案の解明を行いそれとともに不正をやめるよう施術所に働きかけますし、厚生局であれば個別指導、監査の実施という流れになります。

柔道整復師への個別指導(整骨院個別指導・接骨院個別指導)の具体的な流れは、例えば以下になります(以下は、九州厚生局が公表した受領委任の取扱いの中止相当の実例をもとにしています。)。

1 中止相当の理由
(1)九州厚生局及び佐賀県が、整骨院の元開設者及び元施術管理者である柔道整復師に対して、監査への出頭を求めたにもかかわらずこれに応じず、検査を拒み忌避したため。
(2)監査への出頭拒否については、平成30年10月、11月及び12月を実施日とする監査実施通知を発出したところ、監査当日に柔整師が出頭しなかった。監査実施通知には「正当な理由なく監査を欠席した場合は、受領委任の取扱いの中止相当措置を行うことがありますので、念のため申し添えます。」と明記し ていたにもかかわらず、柔整師は3回にわたる監査に正当な理由なく出頭を拒否していることから、今後も監査への出頭の意思がないものと判断し、監査を終了することとした。
(3)出頭拒否となった監査において確認を予定していたもの
①架空請求の疑い
実際には行っていない柔道整復に係る施術を行ったものとして療養費を不正に請求していた疑い。(126件約95万3千円)
②付増請求の疑い
実際に行った柔道整復に係る施術内容に、実際には施術を行っていない日の施術内容を付け増して療養費を不正に請求していた疑い。(16件約6万9千円)

2 監査を行うに至った経緯等
(1)平成29年9月、保険者から、患者に対し文書照会を行ったところ、患者3名について施術を受けていないと回答している月であるにもかかわらず、当該施術所から療養費の支給申請が行われているとの情報提供があったため、平成30年4月に個別指導を実施したところ、柔整師は、療養費の支給申請について、「全て療養費支給申請書のとおりに施術を行った。」と終始回答するなど、保険者が実施した文書照会に対する患者の回答内容と相違する申述がなされたことから、個別指導を中断した。
(2)平成30年6月に、柔整師から、平成30年5月付けで当該施術所を廃止したとして、受領委任の取扱いの辞退に係る届出が提出された。
(3)その後、患者調査を実施したところ、施術を受けていないと回答した日の療養費支給申請が行われている患者が8名確認されるなど、当該施術所から提出された柔道整復施術療養費の請求内容が不正又は著しく不当なものであることが強く疑われたことから、監査を実施することとした。


以上の実例についてコメントすると、監査の欠席により、中止となる方が散見されます。すでに施術所をたたんでいる場合は、このような流れとなる場合も少なくない印象です。
監査欠席での中止(中止相当)の場合は、正当な理由のない欠席1回で直ちに中止となるのではなく、3回程度の正当な理由のない欠席で、監査の打ち切りとなり中止となることが多い印象です。

交通事故の不正請求での刑事事件(詐欺)ではなくとも、このような厚生局の受領委任の取扱いに係る不正請求でも、運用上、整骨院について、中止などが公表されることになります。